ikukmen of the year

国際夫婦のお宅を訪問! スウェーデンと日本の働きかたはこんなに違った 国際夫婦のお宅を訪問! スウェーデンと日本の働きかたはこんなに違った

インタビュー:
伊藤梓さん、金田慎吾さん、野原優衣さん
インタビューに応じてくれたのは、ストックホルムの街の新築マンションにお住まいのマーティンソンご一家。スウェーデン人の旦那様・ミカエルさんと日本人の奥様・佑希子さん、3歳の長女、10か月の次女の4人家族です。お宅へ到着したとき、ミカエルさんと娘さんたちはお友達のお誕生日パーティーに行っていて留守でした。嬉しそうに帰ってきた娘さんに話を聞くと、マンションの中に隠されたお宝を、お父さんたちと一緒に見つけ出す「宝探しゲーム」をしていたのだそう。
ミカエルさんが育休を取得したときの会社の反応には、日本との違いを感じて驚くばかり。スウェーデン人の働き方が顕著に表れていました。いかに国が育児に対して重きを置いているかを感じることができました。
インタビューの様子

上司は育休を取ることを歓迎してくれて、「せっかくチャンスがあるんだからちゃんと取らないとだめだよ」って言ってくれる

−何日間、育休を取りましたか?
ミカエルさん:子どもひとりにつき6か月ずつ取ったよ。本当はもっと長く取ろうかとも思ったんだけど、ラッキーなことに子供が幼稚園に入れたから少し早く仕事に戻ることにしたんだ。
−育休の取得日数は自分で決められるのですか?
お父さん:最大日数の決まりはあるけど、自分たちで何日取るか決められるよ。最大は両親合わせて子ども一人当たり480日で、他にもいくつかルールはあるよ。片親が少なくても60日は取らなきゃいけないとか。その480日の中でも、1日まるまるとるだけじゃなくて、半日だけとか、短いと1/8日だけとかに分割した休みも取れるんだ。この1/8日は送り迎えなどに使うことが多くて、8回分取ってやっとまるまる1日と同じ量だから重宝しているよ。
−会社の上司はなにか言ってきたりしなかったのですか?
ミカエルさん:いや、彼らは育休をとることをすごく歓迎してくれたよ。同僚だっているし、仕事でも大きな問題は起こらないから。それに、育休を取る事に会社が文句を言うのはスウェーデンでは法律違反に当たるんだよ。
−そこは日本との大きな違いのひとつかもしれないですね。
ミカエルさん:そうだね、上司は本当に歓迎してくれるから。彼らの子どもが小さかったときはここまでの育休制度はなかったから、みんなが「せっかくチャンスがあるんだからちゃんと取らないとだめだよ」って言ってくれるんだ。僕の会社の上司は、「昔は育休をとる文化があまりなかったから取らなかったけど、取っておけばよかったなあ」ってたまに嘆いているよ(笑)
−2,30年前に比べて、どうしてこんなに大きく変わったんでしょう。
ミカエルさん:社会的にも考え方は変わったし、それに政府の方針を受けて企業の考えも変わってきたよね。企業側としても、従業員を長くとどめておくためにはみんなが長く、幸せに勤め続けられるような環境をつくることも大切だからね。そんな風に社会も企業もいろいろ考え方が変わったからじゃないかな。こういう、従業員を長く勤めさせるっていう考え方は、今のヨーロッパの会社ではメジャーな考え方だと思う。
インタビューの様子

スウェーデンの働き方はフレキシブル

−育児休暇から何を学びましたか?
ミカエルさん:うーん、何か学んだかなあ。何よりも娘のことを知れたよね。(興味津々に机の上の物を触って倒したり、落としたりする娘を見て)全部この子から遠いところに置いておかなきゃいけない、とかね(笑)
子育てをしていて、一番良かったことは、娘の性格をどんどんわかってくることだね。長く一緒にいることで強い絆ができてくるのがわかる。
佑希子さん:彼の方が多分、親として上手だと思いますね。子供に集中して時間をつくって...。私は上の子のとき、ちょっと失敗したなって思うのは、仕事に復帰してから、元の状態に戻りたくて仕事ばっかりしてしまったので、一時期子どもと接するのが難しくなりました。私は日本人なので日本人っぽい働き方をしますし、勤めているのはアメリカの企業だからどうしてもまだ古典的な部分もあって、長時間働くような風土がある。でも彼はスウェーデンの銀行で働いているから、もっと子育てをしながら働きやすい環境にいるの。
ミカエルさん:働き方が違うよね。僕の会社は、一部の仕事は家でもジムでもどこででもできるし、わざわざオフィスにこもって仕事をする必要はないんだ。だからもっとフレキシブルに仕事ができる。
インタビューの様子
−育児休暇を取っている間、お仕事は一切しないんですか?
ミカエルさん:メールをチェックしたりはするよ。この4年間、あるプロジェクトをやっていて、自分は同僚よりも長く携わっているから、みんなからの質問に答えているよ。すぐに返信する必要はないんだ。ただ同僚の力になりたくてやっているんだよ。会社から言われてやっているわけではなくて、ただ自分がやりたくてやっているんだ。
−スウェーデン政府は育児休暇制度を今以上に向上させる必要があると思いますか?
ミカエルさん:思わない。反対に少し減らすべきだと思うよ。今の制度に満足はしているけど、少し手厚すぎると思うんだ。政府は他に目を向けなければいけないことがあるんじゃないかって思ってしまうね。
インタビューを終えて

スーツ姿で子供を抱っこしながらランチを楽しみ、ベビーカーを押して歩くイクメンパパが印象的なスウェーデンで、実際に彼らの考えを聞くことができたのはとても貴重な経験でした。
通常、育児休暇制度の充実が注目されがちですが、インタビューを通して最も驚いたのは、この制度が「寛容すぎる」という話があがったことです。このような意見が出るのもイクメン国家ならではであり、改めて日本との違いを感じました。またこれだけ職場を離れ、家族と時間を過ごしていても仕事に支障が出ないのは、子供や奥さんと良い関係が築けていることも関係しているのではないかと思いました。近年、日本でも徐々に育児休暇を取得する男性が増加していますが、それでも未だ取得日数は少なく、本当に子供と親密な関係になるためには3か月は必要なのではないか、という意見も出ました。
イクメン国家の根底には、男性が育児をするのは当たり前であるという考え方と、それを可能にするフレキシブルな働き方があると感じました。

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